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代表橋本光よりヨーガ便り【7月号前半】

2023-06-28 10:56:36
 読者の皆様へ
 
夏至が過ぎましたがまだ地上は梅雨の真っ只中です。
じめじめした日も多いですが皆様おかわりございませんか。
 
何回かに渡り連載してきました沖先生回想記も今回が最終号となります。
沖先生の何かが伝われば嬉しく思います。
 
そして伝わった何かが皆様の生き方に少しでもお役に立つ時があれば
これほどうれしいことはありません。
類まれなる人生の達人、真人であられた沖正弘先生に一時期わずか数年でも
薫陶を受けることが出来ましたことは私の最大の誇りであり、また最大の喜びでもあります。
 
ヨーガ便りは新たなテーマで今後も続けていく予定です。
 
引き続きよろしくお願いします。
 
橋本 光
 
<ヨーガ便り7月号>
 
 
******1980年第1回国際総合ヨガ世界大会開催される********
 
******(1年ぶりの活気溢れる三島の道場)******
 
三島の本部道場には1年前の禅ヨガサマーキャンプに出発して以来、久しぶりにオランダから戻ることになりました。
 
オランダから帰国したばかりの私には道場の懐かしさと共に大勢の受講生でごった返す道場内の活気に圧倒されました。
 
研修生もそれなりに入れ代わり新しい若い奉仕生、研修生が増え新たな息吹と時の推移を強く感じました。
 
道場では嚴しい行を通して本来知らない者同士であるにも関わらずお互い励まし合いいたわり合うという仲間意識が自然に育まれて行くことがはっきり感じられました。
 
沖先生も変わりなく、いつもの凄まじい気迫で治療、さらに講義から身体強化訓練の直接指導まであらゆる面で全身全霊を込めて指導に当たっておられました。
 
翌年の一大イベント第1回国際総合ヨガ世界大会に臨むべく準備が始まりかけ私にも準備の会議に参加するように指示されていましたがオランダから帰国したばかりの私にはなかなか準備状況は掴めず苦労しました。
 
*****(常識の世界と非常識の世界)******
 
その理由の1つには大会準備のミーティングが頻繁に慌ただしく開催されるのですが、ミーティングの時間が突然変わったりミーティング内容が変わったり、要は企業内のミーティングのように決まった時間に予定通りの議題について話し合うというようなことは無く、まさにカオスの中で話し合いが進み、カオスの中で準備が進んでいるように感じました。
 
ただこの混沌とした状況の中で今やるべきこと、3ヶ月後にやるべきこと半年後にやるべきこと等、時系列的に準備を進めて行く幹部の研修生の皆さんは実に良く頑張っていたと思います。
 
このような予測不能な会議の進め方は一般的には非常識甚だしい進め方であったといわれるでしょうが、沖先生の独自の求道哲学の考えからか、道場生活そのものが、予定があって無きが如く、またわざわざ予定を意図的に変えられたり、形にはまらない予測不能な道場生活スタイルを貫いておられましたから会議だけ常識的予定通りということはそもそもありえないことだったのかもしれません。
 
この予測不能な道場生活のあり方の理由としては恐らく毎日、変化する受講生の体調、周りの状況に合わせてその都度1日のスケジュールを決められたということが1つの理由、もう一つの理由はあらゆる予測不能な状況になっても対応出来る適応力を研修生や奉仕生にはもちろん受講生全員にも養ってもらいたいという沖先生の指導理念にあったように思うのです。
 
ここでいう非常識という意味は決して間違った考えとかおかしい考えという意味ではありません。
 
むしろ私としては枠にハマった常識を遥かに凌駕する自由性ある柔軟思考のひとつという良き意味で使用しています。
 
少し説明が必要かもしれません。
 
そもそも奉仕生や研修生のなかには私も含めもともと心身の調子を崩した病人上がり、半病人の方や社会に順応するには力不足の方もいましたし、その方達は競争、対立の激しい現実社会のストレスから立ち上がる為に訓練に臨んでいる方達でした。
 
そのような方達にこそ再起するエネルギーを掘り起こし、たくましく生きていく力の出し方、道筋を作り身につけさせようと叱咤激励される沖先生は常に相手の無意識的行動、惰性的習慣などにくさびを打ち常に自覚した気づき、意識化をあらゆる場面にて促しておられたのです。
 
そして結果よりプロセスにおける気づき、葛藤から新たなエネルギーを引き出してくださっていたのです。
 
そのような研修生や奉仕生を育成しながら大プロジェクトを遂行するための会議においてはプロジェクトや会議そのものは未完成でも精一杯やれば良いではないか、大事なことはゴールではなくプロセスなんだと。
 
一般社会では主流と考えられるスムーズに物事を達成する成果主義より、会議に参加する1人1人の適応力開発の場、人材育成の場とすることにむしろ重きをおかれていたように思うのです。
 
そこがここで私がいう沖先生流、常識にはない非常識の価値、意義だと思うのです。
 
******(全てのことが訓練の対象)*****
 
会議を通して協調性、独創性等を養い社会に出てからこのようなプロジェクトの準備が役立つようにと考えておられていたように思います。
 
沖先生はあらゆる場が学びの場であり、修行の場、聖地であることを皆に体験してもらいたいという願いが常にあったと思います。
 
プロジェクト推進の場も沖先生流にいえば人格陶冶、修行の場であり人を成長させる聖地なのです。
 
奉仕生、研修生達は私も含めこのような大プロジェクト等の企画推進においては全く経験は無く、もちろん推進する力も知識もありません。
 
そこで沖先生はご自分の信望者の中から企画のプロ、関連会社の社長等多彩に企画推進能力のある方達を集めながら私ら未経験者と共に皆で一丸となって取り組むことができるように特に都会から離れた三島沢地の道場においてすら社会勉強出来るように万事采配されていたと思うのです。
 
東京の下北沢道場でのミーティングが東京会場の京王プラザホテルの最前線フロントとしてもっとも気合が入っていたかもしれません。
 
実行チームの要であった方々などを含め喧々諤々意見がまとまらないことも多々あったように思います。
 
どうしてもまとまらない時などは控室におられた沖先生が出てこられ、ショック療法の如く全く異なる話しをされたり、時には気合を入れるために何かに絡めて凄まじい勢いで活を入れたりと、見事に皆の意識、その場の雰囲気を転換され、瞬く間に問題解決を図られたことも度度ありました。
 
まさに神技のようでした。
沖先生は時としては臨機応変に演技の必要性を説いておられました。
 
当時、人気俳優の多々良純さんが道場に来られた時に多々良純さんは俳優の目から見ても沖先生は俳優以上に真の演技の力をもっておられる方だと話されていました。
 
沖先生はほとんどの者が自己へのまた他者への囚われ、こだわりに束縛されている。。まさに催眠術にかかっているがそれに気づいていない。
 
その催眠術にかかっているみんなを覚醒することをやっているだけだ。
 
だから俺のやっていることを覚醒催眠というんだとことあるごと仰っていました。
 
大プロジェクトだけに確か博報堂にも一部参画してもらったり、大会会長に選ばれた地産グループの総師、竹井博友氏に次のような言葉を言わしめていたのです。
 
竹井会長曰く、沖先生から大会会長に任命されましたがこのような後にも先にも前例の無い大プロジェクトの会長には私では力不足です。
 
本来は大会会長にはソニーの盛田昭夫さんあたりが一番ふさわしいんだがねと。
 
それほど中身のある世界大会を実現するんだと沖先生はまさに鬼気迫る気迫で臨んでおられました。
 
私の担当はある意味雑用係で三島本部と関西の沖ヨガの諸先生達との間のコミニュケーションを円滑化する為、一ヶ月で多い時は10回近く三島と大阪間を新幹線で往復していました。
 
主に京都会場になる黄檗宗の奥田老師や交野の数珠先生、尼崎の大槻先生、和歌山の平井先生等の意見を伺うために時には巡回しました。
 
(大会開催の沖先生の思いとは?)
 
ではこの大プロジェクトである世界大会はどのような主旨で開催されたのでしょうか。
 
沖先生のこの大プロジェクトへの思いは直接お聞きしていませんので正直私には分かりません。
 
ただもし許されるならば私の推測に過ぎませんがどこまでも推測として私の感じることを以下お話させて頂きます。
 
*********世界大会への沖先生の思いとは?世界大会は世界平和を目指す*********
 
インドはじめ欧米の文化、価値観、生活スタイルの多くを知りつくされていた沖先生としては世界平和の実現のためにはまずは相互に異なる文化、価値観、ライフスタイルをお互い認め合い、学び合い、補い合うことがもっとも大切というお考えがあったように思います。
異質の世界、異文化圏同士の共存共栄、相互理解からのみ世界の平和は生み出されて行くとのお考えから世界平和に向けての思い、願いがあり国際総合ヨガ世界大会を企画、実現されたように思うのです。
 
つまり世界大会の狙いは世界平和実現の為の原理と実践方法をイベントを通して世界に向けて発信することにあったように思うのです。
 
ですから下ごしらえ的運営のあらゆる場面においても、またスポットライトが眩しい表舞台のあらゆるヨガ行においてもそこには自我意識を放下、放棄し一度。自分を消して他の中に生かして行くというテーマが一貫されていたように思うのです。
 
沖先生には世界の平和、人類、動植物、万類との共存共栄を目指すことこそヨガの大使命であるとのお考えをはっきりとお持ちであったと思います。
 
世界平和の実現を謳わないヨガの大会はヨガの大会ではない。と沖先生の声が聞こえて来そうです。
 
そしてお互い認め合うことこそが世界平和の第1歩であるとのお考えをこの大会で宣言されたいとの思いがあったと今となっては強く思うのです。
 
異質の面をお互い認め合うというゴールのためには自己中心の考えを捨てなければなりません。
 
自我意識を薄めてひたすら利他の為に無条件で力を尽くすという方法、手段が必要なんだと何度も仰っていたように思います。
 
その方法、手段とはまさに沖先生が常に提唱されていた、感謝、懺悔、下座、奉仕の4つの旗印のことなのです。
 
この4つの旗印を頭だけで理解するのではなく行動を通して、日常生活の中で実践して行くための学びの場としてわざわざ禅宗、黄檗宗の万福寺での禅の行も日本のヨガとして共催されたと思うのです。
 
そして世界平和実現の為の原理と方法の2本柱はまさに日本の精神文化の真髄である禅と沖道ヨガの中にこそある。
 
沖先生はこのような自負の思いで企画、実現されたと思います。
 
また、沖先生がなぜ世界では沖先生より広く知られていると思われるインテグラルヨーガのサッチダナンダ師やハタヨガの達人、BKSアイエンガー師をわざわざ日本の地に招待されたのか。その真意はどこにあったのか。
 
この世界的な2人のヨギを日本に招待されたのは決してインドのヨガを日本に紹介するためではなく沖先生としては世界的なインドのヨギに日本精神文化の深さ、広さを感じ取ってもらい、その思いを世界に発信してもらいたいけいというところにあったのではないかと今となっては推測いたします。
 
果たしてサッチダナンダ師とBKSアイエンガー師のお二人は沖先生の思いをどこまで理解され、受け取られたでしょうか。
 
お二人は禅と沖ヨガを通して日本の精神文化の奥深さをどこまで深く感じ取られたか私には良く分かりません。
 
きっと沖先生は後に続く私ら若き研修生や奉仕生に世界的なインドのヨガにも遜色の無いこの沖道ヨガという道としてのヨガの真義を改めて知ってもらいたい。
 
本当の自信と誇りを持ってもらいたい。
 
と強く願っておられたに違いありません。
 
また一方、先生にとっては50年以上取り組まれたヨガ人生の総決算、沖ヨガには世界広しと言えど誰も真似出来ないものがある。
 
このことを今の内になんとかある形にして残すという後世を考えての深い思いもあったように思うのです。
 
禅や武道はじめ日本の精神文化の真髄を体現した総合的求道ヨガ即ち日本の道としての沖道ヨガの存在を世界にあまねく知らしめることこそ俺の使命だと燃えるような熱い思いがあったように感じるのです。
 
*****************************前半を終わります。************************************
次回近いうちに後半を配信します。お楽しみに!!
橋本

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